直近、京葉銀行で住宅ローンにおける50年ローンが登場し話題になりましたので、考察を記事にしたいと思います。
(日経新聞社のリンクはこちら、京葉銀行のリンクはこちら)
目次
〈住宅ローンの一般論〉
従来、住宅ローンは最長35年とされてきました。一方で数年前からこの一般論を飛び越える商品が出現していました。これまで住宅市場、住宅ローン市場ではあんまり目立たないでした商品でしたが風向きが大きく変わり始めたようです。
住宅ローンの50年プランは、長期にわたる家の購入資金の支払いを可能にするもので、特に若い世代の家購入者にとって魅力的な選択肢となっています。しかし、このような長期ローンには、メリットとデメリットの両方が存在しますので、解説します。
〈導入済みの金融機関は?〉
現時点では、首都圏以外での地方銀行、住信SBIネット銀行が導入しています。なお、首都圏ではまだ浸透が少ないものの、地方ではすでに35年超の住宅ローンは一定程度浸透し一般化しているようです。
今回、京葉銀行が首都圏の地方銀行として始めて導入したことは一定程度インパクトがある事象です。首都圏以外ではすでにメジャーだったのは、平均給与が首都圏>地方だったこともあり、首都圏では35年ローンで耐え切れていたのが、給与が上がらず不動産価格が上がりすぎた結果、首都圏でも35年では耐えられない(=住宅マーケット、住宅ローンマーケットが成立しない)ことを示していると考えます。
〈日本以外の事情〉
住宅ローンの返済期間を50年に設定することは、日本国内で注目を集めていますが、他国ではどのような運営になっているのでしょうか?
50年住宅ローンの国際的な普及度合い
日本では、特に若年層や初期収入が低い方々を対象に、50年住宅ローンが提供され始めています。これは、毎月の返済額を抑えることで、マイホーム購入のハードルを下げることを目的としています。しかし、他国ではどのような状況なのでしょうか。
アメリカ
アメリカでは、一般的に30年が住宅ローンの標準的な返済期間とされています。50年ローンは一般的ではありませんが、住宅市場の状況や個人の信用状況に応じて、より長期のローンが提供されることもあります。
ヨーロッパ
ヨーロッパの多くの国々では、住宅ローンの返済期間は20年から30年が一般的です。50年ローンは特定の国で見られることがありますが、広く普及しているわけではありません。
アジア
アジアの他の国々でも、日本と同様に住宅ローンの返済期間が長期化する傾向にあります。しかし、50年という期間はまだ一般的ではなく、各国の経済状況や住宅政策によって異なります。
〈超長期ローンのメリット〉
- 月々の返済額を抑えることができる:
50年ローンの最大のメリットは、毎月の返済額を抑えられることです。これにより、家計に余裕が生まれ、生活費や教育費など他の支出に資金を充てることが可能になります。概ね15~20%程度、毎月の返済額が抑えられる計算です。 - 若い世代でも住宅ローンが組みやすくなる:
収入がまだ低い若年層でも、返済負担が少ないため、住宅ローンを組みやすくなります。これにより、若いうちから自己資産を形成することができるようになります。 - 団体信用生命保険(団信)の加入期間が長くなる:
団信に長期間加入することで、万が一の場合に備えた保障を長く享受できます。これは、家族にとっての安心材料となり得ます。これは非常に有利で、既存の生命保険などは見直して安くできる大チャンスです。
〈超長期ローンデメリット〉
- 返済総額が大きくなる:
50年ローンは、返済期間が長いため、利息の総額が増加します。結果として、短期ローンに比べて返済総額が大きくなります。 - 老後も返済が続く可能性がある:
50年ローンを組むと、定年退職後も返済が続くことがあります。これは、退職後の収入が減少する中で、返済の負担が生活に影響を与えるリスクを伴います。 - 残債割れのリスク:
長期ローンでは、住宅の価値がローン残高を下回る「残債割れ」のリスクが高まります。これは、将来的に住宅を売却する際に問題となる可能性があります。
〈直近の日本の情勢との兼ね合いについて〉
①不動産価格推移と残債割れについて
借入期間が長くなると、上記デメリット③のように残債割れの可能性が高くなります。首都圏の駅近マンションであれば価値が維持される可能性が高いと思いますし。
一方で地方物件だと少し不安が残ります。インフレ基調になりつつあるので、不動産価格も上昇傾向のはずですが、東京一極集中が解消されない限り首都圏もしくは3大首都圏以外では超長期ローンには、管理人個人としてはネガティブです。ただ、「絶対に売却せず生涯住み続ける」ということであれば話は別です。返済計画さえ問題なければ大いに活用すべきです。
②解雇規制緩和について
日本の会社員は、よほどのことがなければ解雇されない(安定賃金と引き換えに、賃金が上がりにくい理由になっているともいわれますが・・・)、安定した職種となっています。住宅ローンの審査上、外資系勤務年収2,000万円より公務員年収600万円のほうが有利なのは、安定した給与が見込める(解雇による収入断絶が考えにくい)ということが前提にあります。
今スポットが当たっている50年ローンもその前提で組成されたスキームのはずですので、今後解雇規制緩和が行われた場合は運営自体見直しになる可能性があるとい思います。
〈まとめ〉
50年ローンは、特に若い世代にとって、住宅購入のハードルを下げる有効な手段です。しかし、長期にわたる金利の支払いや、老後の生活への影響など、慎重に検討すべきデメリットも存在します。
住宅ローンを選択する際には、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、自身のライフプランに合った最適な選択をすることが重要です。住宅ローンの選択は、個々の経済状況や将来計画に基づいて慎重に行うべきです。また、専門家のアドバイスを求めることも、賢明な選択と思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。ではまた。